黒龍王の縁結び師


「それで陛下のお心を少しくらいは伺えませんか」
「先に言っておくが、俺はまだ妃を娶るつもりはない」

いつも通りの釘を刺され、清恭はそれくらいは予想していたので続きを待つ。

「簡単に言えば、俺も縁結び師の力というのを見てみたくなったんだよ」
「彼女の力は万能ではないですよ」
「現状口を閉ざした姫の話し相手など、対立する姫達は無理だろう。
なら三公の後ろ盾が無い、隅に追いやられた姫の方がまだ近づきやすい。
そこで何か少しでも情報を得られれば良い、それくらいのものだ。
このままでは林家が収まらない。
馮家当主は相手にしていないが、周家が両家の揉め事に乗じて娘を売り込み来るのも面倒だ」
「あの娘に何か出来るのでしょうか」
「何かを期待したからあの娘を後宮にまで連れてきたのでは無いか?」

清恭は眉間に皺を寄せたが黙っていた。

「しばらく鴻季としてあの娘と会うが邪魔をするなよ?」
「手袋をしてですか?
なにげに信じているじゃ無いですか」
「単なる魔除けだよ」

煌龍は笑みを浮かべる。
長い付き合いの清恭には、こうなった煌龍を止めることなど出来ないことは理解している。
そして面白そうなことを見過ごせないことも。

「陛下のお望みのままに」

両手を胸の前で組み合わせ、清恭は頭を下げた。