「あとで甘いものでもお渡ししますよ」
「優しいな、明蘭殿は」
「そこ!私を無視して話を進めないでください!」
怒ったように言う清恭に、鴻季は嫉妬は良くないぞと笑った。
「そう、貴方はそういう人ですよね」
「諦めろ、清恭殿。
長い付き合いだろうが。
それよりも明蘭殿に話があるのだろう?
早速話してはどうだ?」
からからと笑う鴻季に清恭は肩を落として、二人に席を勧めた。
「昨日、林(リン)家の姫がようやくこちらに来られました。
ですが、その家でボヤがあり、姫は移られた部屋に閉じこもって仕舞われたのです。
おかげで何も事情が聞けず困っています」
何故それで蘭花が呼ばれているのかいまいちしっくりこないと思いながら、気になることを質問した。
「林家の姫は後宮に入られていたのですよね?
一つ間違えば命を落としていたかもしれない大事、もしかして不手際でも責められているのですか?」
横に座っていた鴻季はしげしげと蘭花を見るので、流石に居心地が悪い。
「鴻季様、何かありますでしょうか」
「いやいや、可愛いなと」
バシャ、と水音がすれば、清恭が手を震わせ器から茶がこぼれている。
「何か拭くものをお持ちします」
「いいよ、明蘭殿。
この家の者が片付けるから」
この家の主である清恭ではなく鴻季が言うので、蘭花が何か言おうと清恭を向くといつの間にか令姿がいて、さっさと卓の上を拭いて新しいお茶を注ぎすぐに奥へと消えた。
蘭花は幻覚かと思ったが、どうやら蘭花を送り出したあとにこちらに来たらしい。
それなら待ち合わせの必要など無かったのでは無いかと、蘭花は内心で独りごちる。



