黒龍王の縁結び師


「驚かせて済まないな。
お嬢ちゃんが噂の仕舞われた姫の侍女か?」

低く、落ち着いた声。
おずおずと蘭花が顔を上げると、太陽を背負った男がいた。
蘭花は小柄ではあるが、男は標準よりかなり背が高い。
大柄ではないがしっかりとした胸板にすらりと伸びた手足。
はっきりとした目鼻立ちに、焦げ茶色の髪が目を引く。
長い髪を一つに結んで垂らしているが、太陽の光を浴びて琥珀のようにキラキラとしている。
年の頃は二十五歳前後というところだろうかと蘭花は見ていて考えた。

「大丈夫か?」

再度声をかけられ、目の前の美丈夫に釘付けになっていた蘭花は我に返る。
男の腕には白い布が巻かれいて、男はそれを笑って指さした。
どうやら清恭が遣わせた男は、この者らしい。

「失礼致しました。
わたくし、明蘭と申します」
「俺の名は鴻季(コウキ)。
清恭殿に言われて君を迎えに来た」

白い歯を見せて笑う鴻季に、蘭花は太陽のような男だと思った。
陽の光を浴びていることがなんと似合うのかと感心し、男の手に気づいた。
男は皮で出来た手袋のようなものをしている。
かなり柔らかく薄い素材のようで、とても高価なものであった。