こんなことになったのは数日前。
蘭花の店に来た清恭は、翌日には蘭花をほぼ拉致に近い状態で後宮に押し込んだ。
状況が全くわからない蘭花に、
「貴女は黒龍王の後宮で生活をしながら、私の主である陛下の妃を見つけていただきます。
貴女は私の遠縁の娘で、借金がかさみ父親より遙か年上の男の後妻にさせられそうになったので逃げてきたという設定です。
しばらく身を隠すためにその娘を半年ほど後宮に置かせて欲しい、と陛下にお伝えしましたら、よい、との仰せでした。
貴女には侍女の服をお渡ししますので、外に出るときはあくまで蘭花様つきの明蘭ということで振る舞ってください。
貴女の立場では簡単に陛下にお目にかかることなど出来ませんが、せめて後宮にいる他の姫や関係しそうな方とお会いしてご縁を確認してください。
私としても一度くらい陛下とお目にかかれるように策は巡らせます
当然、陛下の後宮にいるのですから最低限の勉強はしていただきますので。
前金はしっかりお支払いしているので当然ですよね」
ここまでほぼ一息で清恭は話した。
蘭花は初めて着るそれなりに(後宮に入る娘としては貧素)素晴らしい服装で椅子に座っていた。
だがその目はうつろだ。
危ない話だろうと思いつつ、目の前に積まれた多額の前金に目がくらんで了承したらこんなことになってしまった。
自業自得とは言え、想像の斜め上のような状況について行けない。
「貴女の侍女はそこにいる令姿と明蘭の二人ということにしています。
明蘭は私の手伝いもするということで、後宮から外と行き来していても問題ないようにしましたから目一杯その立場を利用してください。
では、必ず、絶対に、早く、陛下のお相手を見つけてください。
報告を心待ちにしております。
もちろん待つだけではなく、催促にも来ますからご安心を」
笑顔で清恭はしめくくると、後宮へ入るために一時留め置かれた部屋から出て行ってしまった。



