「明蘭(メイラン)様のおかげで息子の良縁がまとまりました」
「それはようございました」
長方形の卓を挟み座っている明蘭に、何度も男は頭を下げる。
男は四十過ぎ、身なりは少しだけ金持ちというようにしたいのだろうが、生地も作りも上等なので貴族らしさは隠せていない。
この男は家を継ぐ唯一の息子になかなか相手が決まらず、わらにもすがる思いできたのが夜だけ営業する『この店』だった。
この店は人気が高く、一見さんお断り、必ず誰かからの紹介でしか『視て』はもらえない。
男の前で黒の服を着ている明蘭は、『縁結び師』と呼ばれていた。
誰と誰に繋がりがあるか、それが良いものなのかを感じ取るという。
騒がしい街から少し奥まった路地裏にある店。
ここも縁を結んでもらった報酬にと、とある貴族からあてがわれた場所なので、なかなかに良い場所を無料で使っている。



