「ハコニワ祭の開会を宣言します」


活気に満ち溢れているハコニワ際
なんてったって今年は1年女子がいるからな
校内の男子生徒は気合いが入っている


斯く言う俺も例に漏れず
女子のために気合いを入れたわけではないことが周りのやつらとは違う点だ


だけれども俺の出番は先、というか前半の後より
任せてくれなんて言われたが、俺も何かした方がよかったのではと思う


俺の恋愛なのに誰かに頼らなきゃいけないなんて格好が悪いし示しもつかない
そんな悶々とした時間が過ぎていく


「続いての競技は、『借りもの競争』です!ルールは簡単、お題箱から封筒を一枚とり、中の用紙に書かれてあるお題と共にゴール。その後、係員にお題を提示してください!」


一気に会場が沸く
この競技が午前の中で最も注目度の高い競技だろう
そんな競技に参加することになった俺


乗りきるしかない
合図に合わせてスタート
どの封筒をとるかは事前に知らされていた
その封筒を誰かにとられる前に先にとる


かさりと開ける
3つ折りになっていた紙
そこに書かれてあった文字

『 好きな人
もしくは
仲良くしたい人 』



俺はしばらく立ち止まって考えてしまった
これどっちとっても、亘鍋しかいないじゃないかと
協力者は俺に目配せをしながらマイク越しに俺を煽る


「おーっとここで、学内カレシになってほしい男No.1(実行委員調べ)の渡邊先輩の動きが止まってしまう。その間に1人目がゴール!お題は『かつら』「私の名字が桂で......」クリアです!誰かのヅラを持ってくることを少し期待してましたこと、ここに謝罪いたします!」


口は回っているが、早く行けという圧がある
最後にゴールするのも目立つだろう
仲良くしたい人の体で来てもらうしかない


迷わず自分のクラスのテントに行き、亘鍋の腕をつかむ
驚いたような亘鍋の表情に「頼む、着いてきてくれ」と一緒に走る


いつもよりやけに周りの女子生徒の声がうるさい、ヤジが飛んでくる



「2人ってそういうかんじかー?」

「えー!なにそれ!」

「うそでしょ???」

「きゃぁーーー!」


ゴール後にお題の紙を見せる



「3回連続で『好きな人』が来るかと思いきや『仲良くしたい人』でしたか!彼とはどんなご関係で?」

「席が前後のクラスメイトだ」

「わかりました。クリアです!あ、ちなみに恋人はいらっしゃるのですか?」

「さーな。けど好きな人はいるんだわ、これが。ってことでもういいよな」


首を縦に振る協力者をよそに俺は横目で亘鍋を確認する
少し顔色が悪く見えるのは俺の気のせいなのか......?



渡邊said end
体育祭のわたなべend

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