「ねぇ、杏夜ー!さっき渡邊先輩から電話来てたよー!ずっと鳴ってたから私出たんだせど、折り返しするって伝えてるから!」


僕のスマホを片手に、妹──亘鍋(わたなべ)杏晴(あずは)が今日忘れてたでしょと渡してくれた
渡邊とはかれこれ3ヶ月は話してないと思う


渡邊から電話なんて1度もなかったのに突然どうしたんだろう
折り返して第一声はなにを言えばいい?


悩めば悩むほど過ぎてゆく時間
1度深呼吸をし、メッセージを送信した



『今、電話しても良いかな』



相手が手が離せないときに連絡するのは迷惑に当たるだろうから先にメッセージで確認をとる
するとすぐに既読がつき、僕からかけようと思っていた電話が渡邊からかかってきた


驚きすぎて危うくスマホを落とすところだった
ボタンを押し、耳にあてがう


「も、もしもし。亘鍋です。」

「おー、電話越しはやっぱ違うな」

「渡邊?」

「悪い悪い。聞こえてくる亘鍋の声がなんだか新鮮で。あ、あと亘鍋の妹に渡邊が感謝してたってあとで伝えといてくれ。で、本題なんだが......」


渡邊からの内容はいったってシンプルなものだった
配布物に僕のノートが混じっていたのに気づかず持って帰ってしまっていたこと


僕のノートはぶっちゃけどうでもいい
些細な問題にすぎないから
そのノートを今から僕ん家まで持ってくると言う渡邊


明日学校へ持って来てくれるだけで大丈夫だからとなんとか説得した
渡邊みたいなイケメンが我が家にきたらプチ事件に発展することは想像に難くない


通話を終えて、新たに残った通話履歴
ほんの10分程度の電話だったのにまだ心臓が早鐘を打っている


......?


「何だこれ」


僕が渡邊と話す前に僕のスマホにかかってきていた電話の件数はざっと20近く
こまめに連絡してくれていたのに家に忘れていたせいで渡邊に迷惑をかけてしまっていた


それに加えて最後から2番目の通話履歴
多分渡邊と杏晴の通話時間だと思われるのだがそれが何と僕よりも長い1時間越え


『兄は今日スマホを忘れて学校に行ってしまっているので、帰ってきたら渡邊さんに折り返しの連絡を入れてって伝えます。』


くらいでは???
僕より長くて少し羨ましい
妹に嫉妬する兄とか恥ずかしすぎる


渡邊がお礼をとのことだったから、伝えるついでにさりげなく聞いてみよう
そうしよう、きっとそれが良いと納得させ、聞きに行く



「杏晴ー。渡邊がお礼を伝えてくれって言ってたけど何のことだったんだよ」

「えー!渡邊先輩にお礼言ってもらえるとか光栄すぎるぅ~♪でも内容は秘密だから教えらんないかな~」



『わかる日はくるから大丈夫だって、安心しなよ』
という慰めで終わる
『私は応援してるから』
と、何とも意味のわからない言葉を残して


亘鍋said end