︎︎⟡
放課後、教室ではぞろぞろとクラスメイト達が帰り始めていた。
そんななか俺と久我はまだ教室に残っていた。
久我がノートをぱんっ、と机に叩きつける音が響いて、思わず目を向ける。
「…ん?」
俺の目の前に開かれたノートには、さらっと「1.壁ドン」と書かれていた。
「な、なにこれ…」
俺が言うと、久我がニヤリと笑う。
「これから、ここに書いてけばいい。試したいこと、佐倉が読んでる漫画からとか。面白そうだろ?」
「いや、ちょっと待って…なんとなく想像はしてたけど。やっぱり俺がされる側ってこと…?」
「ん?そりゃそーでしょ」
久我は軽く肩をすくめて、当たり前だろみたいに言う。
俺の認識がおかしいみたいに言うのやめろ!
その時、教室のドアが開いて、佐竹と狼谷が入ってきた。どうやら佐竹が忘れ物をしたらしい。
「あれー、ここになかったけな?」
「はぁ⋯お前どうせ捨てただろ」
ばちっとまた目が合う、が次に合ったのは佐竹だった。
「え?え?二人きりでなにしてんのよ〜?」
佐竹が興味津々にこっちにずんずんと向かってきた。
狼谷は無言で俺たちを見つめながら、何も言わずに何を考えているのか分からない表情を浮かべている。
「佐倉くんって、久我とそんなに仲良かったっけ?意外!」とキラキラした瞳を浮かべて一歩近付いてくる。
俺はちょっと焦った。
「あ、いや…その…」
言葉がうまく出てこない。やばい、どうしよう。コミュ障発動。
その瞬間、久我がふっと口を開いた。
「いーの。俺ら今ニコイチやってんだよ」
ふざけたような軽い口調で、俺の肩を組んでくる。
「もー!俺らともサンコイチして!!」
佐竹がフンフンとやけにノリノリで言うせいでついクスッと笑いが込み上げてしまう。
「あれ?!佐倉くん笑ってる〜、俺面白いでしょ?でしょでしょ?」
ニヤニヤとしながら佐竹は俺のほっぺをこついてくる。本当に陽キャのノリって感じだ。けど悪い奴ではないんだろうな、とすぐに分かる。
狼谷は少し苦笑しながら、「はいはい、もう帰るぞ、てか先に帰るからな」と手を振ってそのまま去っていく。
佐竹はまだふざけたように「まてよー!」と言い残して、俺らに軽く手を振ってから狼谷を追っていった。
嵐のような人達だったな。でも佐竹は案外話しやすかった気がする。狼谷はまだちょっと怖いけど…。
教室は一気に静かになり久我が無言で俺の方をちらっと見てから、口を開く。
「大丈夫だった?佐竹も狼谷も悪い奴じゃないから、ただちょっとうるさいだけで」
なんだか親御さんみたいな言い方だな、なんて思って少し笑みがこぼれる。
「あぁ…うん。全然、俺面白いこと言えないのに、佐竹ずっと笑ってたし良い人なんだなって思う」
「⋯ふーん。俺は?」
「え?」
久我の言葉に、少し驚いて顔を上げると久我がふっと肩をすくめながら俺をじっと見ていた。
「佐竹と一緒にいたほうが楽しそう?」
その瞬間、久我がすっと近づいてきて、俺の手の上に自分の手を重ねてきた。
「え、っ…」
思わず目を見開く。手のひらがあたたかくて、ドキドキして、心臓がうるさく響いている。
一瞬、頭が真っ白になりそうだった。でもすぐに頭の中でパチンと音が鳴った。
「あ、これも少女漫画の真似か⋯」と、我に返る。
久我の手を軽く押し戻すようにして言って返す。
「いや⋯演技上手すぎだろ、お前。なんかこっちまで恥ずいわ」
久我が俺の手を離すと、無言で俺のほうを一瞬見つめた後、ふっと小さく呟いた。
「まぁ、今はまだいいか…」
その言葉に、思わず目を向けると久我はまた少し顔を背けて、無言で窓の外を見つめている。
「え?なんか言った?」
俺が聞くと、久我はすぐに目を逸らしてまるで気にしてないかのように言った。
「ん。気にしなくていいよ、そんなことよりほら立って」
「?っ、なに」
久我が俺の手をひいて席から立ち上がらせる。
「佐倉は少女漫画の中で、どんな関係性が一番好きなの?」
久我が振り返りながら、唐突な質問を投げつけられる。
「え?関係性って⋯」
つまり幼なじみとか、あとは義兄弟とかそういうのか。色々あるけど⋯。
ちょっと考えてから、俺は答えた。
「後輩と先輩、かな」
久我は軽く「ふーん」と呟いて、少しだけ間を置いた後、突然俺の顔をじっと見つめて言った。
「じゃあ、俺が後輩役?」
その瞬間、俺の心臓が少し早くなる。でも久我はいつも通りのように自然に続けた。
「なら、先輩にはちゃんと敬語使ったほうがいいですよね?」
「え?あ、うん、そうだね…」
久我の凄まじい対応能力に驚きながらも、なんとか答える。にっこりとした優しい表情と口調は本当に"後輩"みたいだ。
「じゃあ、これからは敬語で話しますね、先輩」
まるで本当に後輩みたいに、すごく丁寧に、しかも少しだけ遊び心を混ぜた口調。
その言い方に、一昨日見ていた漫画に出てきたキャラがリンクしてちょっとドキっとする。いやいや、相手は久我だぞ?
俺は一瞬戸惑って、止めようとするが久我がすっと俺の目の前に歩み寄ってきて、気づけば教室の壁に背中がついていた。
「ちょ、っと…ま、まって!久我?!」
慌てて言うと、久我はすぐに微笑みながら一歩近づいてきて、まさに壁ドンの体勢になった。
「先輩、こういうのが好きなんですよね?」
今度は本当にドキドキするような距離感で言ってきた。
その声が耳元で響いて、俺は思わず息を呑んだ。
「ま、待て…久我、ストップ…!!!!」
パンクしそうな頭で咄嗟に、犬に言うような待てをだす。
放課後、教室ではぞろぞろとクラスメイト達が帰り始めていた。
そんななか俺と久我はまだ教室に残っていた。
久我がノートをぱんっ、と机に叩きつける音が響いて、思わず目を向ける。
「…ん?」
俺の目の前に開かれたノートには、さらっと「1.壁ドン」と書かれていた。
「な、なにこれ…」
俺が言うと、久我がニヤリと笑う。
「これから、ここに書いてけばいい。試したいこと、佐倉が読んでる漫画からとか。面白そうだろ?」
「いや、ちょっと待って…なんとなく想像はしてたけど。やっぱり俺がされる側ってこと…?」
「ん?そりゃそーでしょ」
久我は軽く肩をすくめて、当たり前だろみたいに言う。
俺の認識がおかしいみたいに言うのやめろ!
その時、教室のドアが開いて、佐竹と狼谷が入ってきた。どうやら佐竹が忘れ物をしたらしい。
「あれー、ここになかったけな?」
「はぁ⋯お前どうせ捨てただろ」
ばちっとまた目が合う、が次に合ったのは佐竹だった。
「え?え?二人きりでなにしてんのよ〜?」
佐竹が興味津々にこっちにずんずんと向かってきた。
狼谷は無言で俺たちを見つめながら、何も言わずに何を考えているのか分からない表情を浮かべている。
「佐倉くんって、久我とそんなに仲良かったっけ?意外!」とキラキラした瞳を浮かべて一歩近付いてくる。
俺はちょっと焦った。
「あ、いや…その…」
言葉がうまく出てこない。やばい、どうしよう。コミュ障発動。
その瞬間、久我がふっと口を開いた。
「いーの。俺ら今ニコイチやってんだよ」
ふざけたような軽い口調で、俺の肩を組んでくる。
「もー!俺らともサンコイチして!!」
佐竹がフンフンとやけにノリノリで言うせいでついクスッと笑いが込み上げてしまう。
「あれ?!佐倉くん笑ってる〜、俺面白いでしょ?でしょでしょ?」
ニヤニヤとしながら佐竹は俺のほっぺをこついてくる。本当に陽キャのノリって感じだ。けど悪い奴ではないんだろうな、とすぐに分かる。
狼谷は少し苦笑しながら、「はいはい、もう帰るぞ、てか先に帰るからな」と手を振ってそのまま去っていく。
佐竹はまだふざけたように「まてよー!」と言い残して、俺らに軽く手を振ってから狼谷を追っていった。
嵐のような人達だったな。でも佐竹は案外話しやすかった気がする。狼谷はまだちょっと怖いけど…。
教室は一気に静かになり久我が無言で俺の方をちらっと見てから、口を開く。
「大丈夫だった?佐竹も狼谷も悪い奴じゃないから、ただちょっとうるさいだけで」
なんだか親御さんみたいな言い方だな、なんて思って少し笑みがこぼれる。
「あぁ…うん。全然、俺面白いこと言えないのに、佐竹ずっと笑ってたし良い人なんだなって思う」
「⋯ふーん。俺は?」
「え?」
久我の言葉に、少し驚いて顔を上げると久我がふっと肩をすくめながら俺をじっと見ていた。
「佐竹と一緒にいたほうが楽しそう?」
その瞬間、久我がすっと近づいてきて、俺の手の上に自分の手を重ねてきた。
「え、っ…」
思わず目を見開く。手のひらがあたたかくて、ドキドキして、心臓がうるさく響いている。
一瞬、頭が真っ白になりそうだった。でもすぐに頭の中でパチンと音が鳴った。
「あ、これも少女漫画の真似か⋯」と、我に返る。
久我の手を軽く押し戻すようにして言って返す。
「いや⋯演技上手すぎだろ、お前。なんかこっちまで恥ずいわ」
久我が俺の手を離すと、無言で俺のほうを一瞬見つめた後、ふっと小さく呟いた。
「まぁ、今はまだいいか…」
その言葉に、思わず目を向けると久我はまた少し顔を背けて、無言で窓の外を見つめている。
「え?なんか言った?」
俺が聞くと、久我はすぐに目を逸らしてまるで気にしてないかのように言った。
「ん。気にしなくていいよ、そんなことよりほら立って」
「?っ、なに」
久我が俺の手をひいて席から立ち上がらせる。
「佐倉は少女漫画の中で、どんな関係性が一番好きなの?」
久我が振り返りながら、唐突な質問を投げつけられる。
「え?関係性って⋯」
つまり幼なじみとか、あとは義兄弟とかそういうのか。色々あるけど⋯。
ちょっと考えてから、俺は答えた。
「後輩と先輩、かな」
久我は軽く「ふーん」と呟いて、少しだけ間を置いた後、突然俺の顔をじっと見つめて言った。
「じゃあ、俺が後輩役?」
その瞬間、俺の心臓が少し早くなる。でも久我はいつも通りのように自然に続けた。
「なら、先輩にはちゃんと敬語使ったほうがいいですよね?」
「え?あ、うん、そうだね…」
久我の凄まじい対応能力に驚きながらも、なんとか答える。にっこりとした優しい表情と口調は本当に"後輩"みたいだ。
「じゃあ、これからは敬語で話しますね、先輩」
まるで本当に後輩みたいに、すごく丁寧に、しかも少しだけ遊び心を混ぜた口調。
その言い方に、一昨日見ていた漫画に出てきたキャラがリンクしてちょっとドキっとする。いやいや、相手は久我だぞ?
俺は一瞬戸惑って、止めようとするが久我がすっと俺の目の前に歩み寄ってきて、気づけば教室の壁に背中がついていた。
「ちょ、っと…ま、まって!久我?!」
慌てて言うと、久我はすぐに微笑みながら一歩近づいてきて、まさに壁ドンの体勢になった。
「先輩、こういうのが好きなんですよね?」
今度は本当にドキドキするような距離感で言ってきた。
その声が耳元で響いて、俺は思わず息を呑んだ。
「ま、待て…久我、ストップ…!!!!」
パンクしそうな頭で咄嗟に、犬に言うような待てをだす。


