嬉しくない。
そんな風に幸せなんて祈られても。
なのに、以前ならその背中が見えなくなるまで見送っていたのに、なぜ今日はもう彼の背から目を離しているのだろう。
視界の端から零れていく先輩のキラキラ。
気が付けば、足が自然と前を向いていた。
顔を出したての太陽の下を歩く。
一切、振り返らずに。
まだ雨が降っている背中側、泣いていたかもしれない先輩に気が付かないふりをして。
ひどい後輩だ、なんて似合わない台詞でわたしの頭が作り出した先輩が罵倒してくる。
でも、きっとあの先輩なら
「きみはやっぱり、面白いね」
って、言ってくれるはずだ。



