それは、






 


 「かわいい後輩へ



  これまで、ありがとう」







 突如、そんな置き手紙が目に入ってきたせい。手に持っていたはずのケーキの箱がぐらりと揺れて、そのまま落ちていく。グシャ……ッ、不快な音がして床に飛び散った生クリーム。







 「先輩……?」






 掠れた声が自分の口元から、零れ落ちた。






 呆然としながら目についた傘のタグを恐る恐るひっくり返してみれば、そこには12000円と印字された値札がついたままだった。






 「こんな、身の丈に合わない高い傘なんて……残して、馬鹿じゃないの?」






 手に取った傘は、先輩の瞳と同じ濡れ羽色をしていた。