しばらくして、わたしも後を追うように家を出て会社に向かう。なんだか足が軽く、いつもは徒歩30分かかる駅まで20分で着けてしまった。好きなひとからの言葉以外の愛ほどわたしを幸せにするものはないな、としみじみと思った。






 「ただいま〜」






 気分の良いまま、家に帰ると部屋の電気が消えていて驚いた。手に持っているケーキの箱に気を遣いながらスイッチを押すと、蛍光灯に照らされたワンルームのテーブルの上に置かれた、雑にリボンが巻かれた傘だけが目に入った。







 「え、すごい。約束の傘じゃないですか」






 ヒールを脱ぎ捨てて、すぐさま傘に駆け寄る。けれど、肝心の先輩が見当たらない。






 「なんですか、サプライズですか……?」






 わたしだって、用意してるんですからね。なんて胸を張ろうとしたのに、結果として胸を張ることは叶わなかった。