湿った雑巾を何日か放置した、みたいな匂い。
 先輩が夏を嫌いだしてから、ずっとそんな香りが鼻の奥にこびりついて離れなかった。






 部屋干しにした洗濯物の下で寝る日々。
 先輩と暮らし始めてから、3度目の初夏。






 梅雨真っ只中の夜。
 ふたりで寝るには狭かったベッドで、ひとりで眠ることに寂しさを覚え始めていた頃。






 先輩が家に帰ってくる頻度が減った。






 帰ってきても、深夜の2時。毎回千鳥足になって、お風呂にも、わたしの作った夕飯を食べずにベッドに潜り込んで寝てしまうのだ。







 それで、わたしが会社へ行くと起きてどこかへ出かけて帰ってこなくなるの繰り返し。