「まあ、悪いようにはならないよ。なんたって俺はツイてるらしいからね」






そんな会話をふわふわとした次の日から、先輩はまたどこかへ出かけるようになった。






そしてわたしが就活でパンパンになった足をなんとか引きずって帰ると、なにか憑き物でも取れたのか、ニコニコ微笑みながら柚子サワーのロング缶を差し出してくるようにもなった。






「先輩は、今しあわせですか?」






また酔う。缶に小さく書かれたアルコール度数は9%だった……ような、きがする。






酔っ払って、霧の広がったようにぼんやりとしてグラグラする頭の中では、先輩がわたしの問いになんと答えたかを理解することは出来なかった。けれど、幸せならそれでいいと思った。






また明日も、スーツを着て走り回ることになるだろうから、今だけはこの心地よいゆらゆらとした意識の中を揺蕩っていたい。







冷たい机の上に突っ伏したまま目を閉じれば、あたたかい先輩の腕に抱きしめられる幸せな夢を見ることができた。