けれど、綻びがでるのは意外と早くて。
 稼ぐから宣言のわずか1ヶ月後に先輩は、






 「あーあ、博打だったかな」





 「全然、稼げねぇ」






 なんてボヤきながら、わたしの家のベランダで煙草を吸う生活に逆戻りしていた。それどころか、ほぼ毎日いろんな会社を駆けずり回って、面接を乗り越え帰ってきたわたしには目もくれず、わたしの投げ出した鞄を漁る始末。






 「ねえ、先輩。なんで毎日、わたしの鞄あさるんですか〜? たのしいもの、入ってます?」






 これは就活に追われすぎて酒をあおったわたしが酔っ払いながら、なんとなく先輩の機嫌が良さそうな日に聞いた時の記憶。






 「あ〜それね、お金拾ってた」






 「え、お金が欲しいなら言ってくださいよ」






 「ちがうよ、きみの鞄の中に入ってる財布の中から拾ってた。1日、1枚軍資金ってことで」







 軍資金? と首を傾げたわたしに、先輩はなんだか上手いことを言ってはぐらかして、この話は終わり。なんて勝手に完結した彼に、すこしだけ距離を感じた。