そして何度か季節が巡り、また夏。
先輩とこうして同棲……いや、先輩と一緒に時を刻み始めてから3年が経った。
どれだけ暑くてもおかまいなしにリクルートスーツに見を包む分、バイトに出られない日々が続くわたしになにを思ったのか、彼は突然変なことを言い出した。
「俺も、稼いでくるよ」
「な、急に……え、先輩。本当にどうしちゃったんですか。もしかして、わたしの養い度合いが足りませんでしたか?」
「ああ、ちがうちがう。今、きみは就活でなにかと忙しいでしょ。だから、俺でもなにか役に立てることないかな〜って友だちに相談したら、なんか稼げる場所を教えてもらってさ」
なんて、言い訳をするみたいに妙に饒舌になった先輩を訝しく思いながらも、ずっと家にいて煙草しか吸っていなかった彼よりはすこしカッコよく見えて、それ以上問い詰めるようなことは出来なかった。
ネクタイも締めず、よくわからない英字ロゴが書かれたオーバーサイズの黒いTシャツに黒スキニーを合わせた彼がどこへ向かったのか。
そんなことを気にかけることすら、この頃のわたしには余裕なんてなくて。先輩の様子がおかしいと気が付いた時にはもう遅い、手遅れだと言われることになるとは思ってもいなかった。



