「大丈夫、きみのことは俺が守るよ。なにも出来ない居候だけど、きみが幸せじゃないと感じた時にはちゃんと責任をとるから。これからも僕だけの可愛《おもしろ》い子でいてね」
この時のことをわたしはちゃんと憶えているわけではない。
だけど、いつだったか先輩が自分から
『あーきみ風に言うと同棲記念日? の時さ、寝こんでたきみの風邪をもらったのは俺だよ。あぁ。もしかして、ファーストキスだった? フハッごめんって』
風邪で寝込んでいたわたしを襲った事実を意気揚々と語ってくれた。だから、キスは風邪の治療になりません。って言い返したら、また彼は後頭部に手を回して恥ずかしそうに俯いた。
『……だって、これまで遊んでた女の子はそれで喜んでくれたんだよ』
怒られてしょげた子どもみたいな姿の先輩は、思ったよりも可愛くて結局この時も『仕方ないですね』って許しちゃったんだっけ。



