「ねえ、俺のどこが好きなの?」






 一旦鳴りをひそめた雷の合間、先輩はわたしの耳を解放するように抱きしめ直してそんなことを聞いてくる。困惑のあまり見上げてみれば、にっこりと有無を言わさない圧のある微笑みと目があった。






 「……急に、恥ずかしい質問してこないでもらってもいいですか?」






 「この手の質問になると、いつも焦って慌てだすの可愛いよね」





 「⋯⋯れた⋯⋯です」






 なあに? とわざとらしく先輩が首を傾げる。
 そんな先輩にはなんの攻撃にもならないと知っていながらも、彼の背骨を探るようにしっかりと背中に手を回して抱きしめ返してから呟く。






 「先輩の、雨に濡れたシャツが背中にくっつくと見える綺麗な背骨と浮き出た肩甲骨です」






 へえ、意外。と軽く笑っただけで、彼がそれから話題を掘り返してくることはなかった。一方わたしにはもうなんの恥じらいも残ってなく、強く強く雨に濡れて張り付いたシャツ越しに、先輩を抱きしめていた。






 それから、また雷が鳴り始めるとすぐに先輩はわたしの耳を塞いでくれた。