「また傘をささないで、わたしの家をビショビショにするつもりですか?」






 「頭固いね、きみは。雨の中走るのって、最高に青春じゃない? 世界がキラキラして見えそうだって思うんだけど、興味ない?」







 「興味なくは……なく……なくないです」






 フハッと笑った先輩に「それは、どっち?」とやさしい声色で諭されて







 「だから、先輩となら雨の中走ってもいいって言ってるんです!」






 なんて、恥ずかしい台詞を言わされた。未だに思い出すだけで、頬と額は余裕で熱くなるからほかのひとから見たら、わたしの顔はりんごみたいに真っ赤になってるんだと思う。






 「じゃあ、行きますか」






 「待ってください。ギブアンドテイクですよ、先輩。帰ってきたら、洗濯物を干すの手伝ってくださいね」






 「ええ、夏ってだりぃね」






 じゃあ、行きません。と意地を張れば、しょうがないな、って後頭部を掻いた先輩は少しだけ恥ずかしそうにしていた。