「また、ベランダで吸ってたんですか?」







 夕飯用の食材を買い出しに行ったスーパーから戻ると、ベランダで黄昏れていた先輩が目に入って思わず声をかけてしまった。






 わたしの声にこちらを振り返った先輩の手元から上がる、もくもくとした白い煙。







 一緒に住み始めてから、先輩がヘビースモーカーであることを知った。なんでもあの、飲み会の席では巧妙に隠していたらしい。






 「うん。健康に悪いって思う?」






 「いや、わたしの肺じゃないんで勝手に真っ黒に染めてたらいいんじゃないですか。あ、でも嫌いじゃないですよ。先輩が吸ってる煙草」







 言うようになったねぇ。と言いながら、煙が上がっていない方の手がおいでおいでとわたしを引き寄せた。その手の動きが無駄に滑らかで、なぜか目が離せない。気が付いたら、彼の腕の中でベランダから外を眺めていることも日常茶飯事になっていた。