「これできみは一生、僕の抜け殻を剥がせても心臓は手に入らなくなったね」 先輩がブレザーの向こう側で笑っていた。 何が言いたいのか、よくわからなくて。 ふわりと漂うシトラスの海を藻掻いて、 暗闇から顔を出せば。 「残念? 心は僕だけのものだよ」 なんて言葉とともに、目の前では自分の学ランから引きちぎった第二ボタンに 口づけをしている先輩がいた。