「そろそろ休み時間終わっちゃうけど、お昼ご飯食べなくていいの?」
「あ、最近お金ないんで。ダイエット中です」
「え、そんな細い腰でダイエット? 馬鹿なの? 金欠でもちゃんと食べなよ」
また、ひとつ紙飛行機が空を舞っていく。春と夏の間、限界まで水を混ぜた青色に薄く伸ばした白い雲がレースのように広がる空は眩しい。
それ、先輩が言いますか? 声に出せなかった言葉が口の中で、消えていった。
「じゃあ、きみも俺へのラブレターを書いたら罪悪感なんてなくなるんじゃない?」
「はぁ? ……いや、今なんて仰りました?」
「そしたら、きみも一緒に紙飛行機飛ばせるよね。なんの気兼ねもなく」
また勝手なことを言って、わたしを困らせる。
「はい……じゃあ、選ばせてあげる。きみから俺への愛の言葉か、きみの住所を書いてよ」
「……選ばせる気ないですよね、その2択」
「なに、嫌なの?」
また、空に紙飛行機が飛んでいく。ふとベンチに目線を下ろせば、先輩の手元に残った紙は最後の1枚になっていた。



