春の花々が散り青々とし始めた初夏らしい空間の中で、黒色のパーカーに黒スキニーを合わせているせいか、ベンチに座っているだけでもなんだか異様に見えてしまった先輩。







 「せーんぱい、なにしてるんですか」






 「あ、これ? ラブレターをお焚き上げする(燃やしてしまう)かわりに、空に飛ばしてあげてるんだ」






 「え。なに、言ってんですか?」






 「え、ラブレターの空葬?」






 噛み合わない会話に首を傾げれば、はじめてこちらを仰ぐように見上げた先輩が軽く唇を尖らせて小さく口を開いた。






 「……って誰かと思ったら、正式に俺の彼女に立候補しちゃったお馬鹿な後輩ちゃんね」






 「こんにちは、先輩」






 「だから、俺はそんな先輩って柄じゃないんだから。敬語使ったりしないでよ」






 嫌です。と首を横に勢いよく振れば、






 「あの日からちっとも変わらないね」






 なんて鼻から息を吐き出しながら、先輩はフハッと笑った。仮に先輩が映像コンテンツなら、クシャッと効果音がつきそうなほど目を細めて微笑む彼の笑い方はやっぱりやさしげだった。