「それ、三箱目ですよね」



 なんて、出ていくつもりはなかったのに。気が付いたら、大学の屋上に設置された喫煙所でひたすらに煙草をふかしている知らない女性の手を止めていた。煙草の箱を開く指先に、自分の手を重ねて。




 「早死に、したいんスか?」




 「したいよ……出来るなら」



 
 こちらを振り返って、目を三日月型に細めて微笑んだ彼女は笑っているのに。僕らの上の空は、彼女が吐き出した煙をすべて集めたような淡いグレーがどんよりと漂っていた。