何を考えているのかわからない先輩に、勝手に憧れて、勝手に期待して。
「先輩は、大人だから」
「先輩みたいになりたいです」
そんないいもんじゃないよ、先輩も。なんて、たしなめられても、わたしを見下ろす影が愛おしくて。いつまでも、一歩前をいく先輩の背中をながめていたかった。
「先輩、はやくしないと遅刻ですよ」
「先輩、お隣失礼してもいいですか」
先輩が走れば、わたしも後をついて走る。先輩が喫煙所に行くと講義室の席を立てば、わたしも「お供します」なんて忠犬のごとくありもしないしっぽを振りまいて、その背中を追いかける。
「煙たくないの?」と聞かれて、そのやさしさに頬を緩めてしまうとか。
「きみにはまだ早いよ」って、煙草もお酒も強要しないところとか。
そのくせ、「へえ、着いてくるんだ。悪い子だね」なんて先輩の隣で講義をサボった時は、サボらせた原因なのにわたしを責めながら目を細めて意地悪気に笑うところとか。
先輩の素敵なところを上げたらキリがない。



