「聞いてよ、後輩。わたし、明日家出する」
ほら、今日も先輩が僕のもとへ家出をしようとやってくる。静かな図書室に先輩の開いた扉の音とその声が響くだけで鼻の頭がツンと痛くなってしまった。
先輩が生きてる……
この瞬間だけを繰り返せればいいのに。
「家出、今日じゃ駄目なんですか?」
また、繰り返す。
西日のせいで、背中が焼けるように痛い。僕になにも力がなくて、ごめんなさい。
情けなく震えた声に不思議そうな顔をして首を傾げた先輩を、今日も見殺しにすることしか出来ないのがどうしようもなく苦しかった。
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