1週間ぶりの東京の空は、先輩の髪の毛よりもすこしくすんだ青色をしていた。







 渋谷で先輩と別れてからは、あっという間だった。







 大学近くのアパートに足を踏み入れた瞬間は、少し恐怖心さえ感じた。わたしもあと数か月したら、東京に染まってしまうのか、と。






 もう柔らかい黒髪で、ラムネの瓶の底を覗きこむような青さを持った先輩はいない。






 どこにも、東京にも。
 だけど、それでよかった。






 だって、心臓が止まった後も波を描かなくなっただけで、波形自体はずっとずっとフラットに続いていくから。





 本当はフラットで終わらす気なんて、なかったけれど。







 死んでも、愛しても、恋の終わりには激しく揺れていた波形は止まるものなら、今は彼の青さだけを見続けていきたい、と思った。