青色の先輩が嬉しそうにふふ。と声に出して笑った瞬間、どこからともなくピーーーーーー⋯と、耳の奥に甲高い機械音が鳴り響いた気がした。波を描かなくなった直線は、ただ長細く伸びていくだけで止まることを知らない。






 心電図を記録していた機械の画面の中には、フラットになってしまった波形がうつっている。なんて、どこかのドラマみたいに黒髪だった頃の先輩に抱いていた恋が死んでいく。






 強く弾けていく炭酸の泡のようにフラットになる直前に激しく波打った波形の痕からは、ほんのりと夏の匂いがした。





 残ったのは、愛か死か。





 「ねえ、見てごらん」





 飲み終わったラムネの瓶を空高く掲げ、空いている片手でわたしの肩を抱き寄せた先輩。





 ふいに近くになった顔にも、もう動揺はしない。
 顔にも髪にも影が落ちるビルの谷間。





 促されるままに先輩の掲げたラムネ瓶を見上げると、くびれに挟まったビー玉は遠い春の空の色を映し出していて、澄んだ青色に染まっていた。





 あまりの眩しさに、目の前がチカチカとする。