「僕はあの頃から、ずっと。いつも追いかけてきてくれるくせに、冷たかったきみのこと嫌いじゃないんだよ。だからこそ、今日終わらせておかないと大学に入ってから、僕と顔を合わせる度に嫌な思いをされるのは心苦しい。ねえ、きみはどうやってその心電図を止めたい?」






 わたしの瞳を覗き込んで、






 「別に今すぐ止めろとは言わないんだけどね」






 といたずらっぽく目を細めた。






 とっさに目を逸らして、先輩の空っぽになったラムネの瓶の中に浮かぶビー玉を見つめてみる。






 ビー玉は青かった。あの頃には叶わなかった色。今じゃなくちゃ見られなかった青。





 濡れたビー玉には反射した先輩の青色の髪がうつっていた。わたしたちが探していた青色。わたしの縋りを打ち砕いた青色。先輩の青色。本当のわたしは、






 「たぶん、嫌いじゃない⋯⋯です」







 思わず、零れ落ちてしまった言葉。






 恥ずかしさを埋めるために、ラムネを勢いよくすべて飲み干す。






 好きが壊れてしまう前に、必死に嫌いになりたかっただけだったのかもしれない。