先輩と飲んだ日から、一度も飲んでいなかったラムネ。






 1年越しに二人で飲むラムネがわたしたちの最期に相応しいのか、と先輩の言葉を待つ。






 「恋の終わりには愛か死しかないんだよ。愛も死も、恋みたいに心電図の波が激しく揺れ動かずに、静かにフラットに落ち着くでしょ。そう考えたら、僕たちの最期はどうなるんだろうね」






 あの日と全く同じ台詞を吐いた先輩。






 その目は天井でも空でもなく、真っすぐわたしに向けられていた。先輩の言いたかったことがやっと理解出来た。






 それから、わたしたちの最期、と口の中で転がし噛み砕く。






 わたしたちの恋の終わりの話なのに、思えば先輩からは一度も「好き」という言葉をもらったことがなかった。だからわたし自身も「好き」を先輩に伝えたことは一度もなかった。






 「残念ながら、心電図が止まった先には死しかないですよ」





 フラットになった波形は元には戻らないでしょう。と声に出してみると、心臓が一度大きく跳ね上がった。






 わたしたちが愛や死で終わらせてしまえるものだったのか、そもそも恋と呼べる関係だったのか。






 わからなくて、手の中のラムネをただ握りしめる。






 「恋の終わりには必ず愛もあるんだよ。心電図が止まってしまっても、その先にも時間は止まらずに流れ続けているでしょ」






 先輩が静かに言うと、ラムネをあおった。喉仏があの日と同じように大きく上下した。