「……今回も守れなくてごめんなさい」
目が覚めると、瞼までぐっしょり濡れていた。意識が覚醒してすぐに制服のポケットに入っていたスマホで日時を確認するのが、すっかり癖になってしまったのがなんとも悲しい。また僕が12月20日にいるということは、前回の今日の先輩も殺されてしまったのだろう。
まだ誰もいない夕暮れの図書室に、僕の謝罪の言葉だけが虚しく響いた。時刻は16:37。きっと今頃先輩のクラスのSHRが終わったはずだ。
今日はすぐに帰らせてみようか。いや、たしか1回目はすぐに帰らせて大きな荷物を持って家を出ようとした彼女は、ちょうど家に帰ってきた父親とバッティングして逆上されたのだから、やめておこう。
かと言って、一度も家に帰さないと僕と寝ているところを襲い掛かってきて二人とも殺されてしまう。時間を見て帰してみても、いつも先輩は父親に蹂躙され殺される未来しかない。
せっかく彼女自身が家出をしたい。という意思を示してくれているのにも関わらず、ずっとその願いすら叶えてあげることが出来なかった。
あと何回僕は先輩を助けるために今日を繰り返して、先輩はあと何度実の父に殺されなくてはならないのだろう。
もしも彼女と僕に明日が来るのなら、あんな家からもこんな世界からも連れ出してあげられるというのに。きっと今日も無意味に繰り返すことしか、出来ない。未来は予定だと言っても、必ず変えられない予定だってあるのだから。



