高校生の頃、屋上前で一緒に過ごした放課後に飲んだラムネの味を、先輩の言った恋の終わりを、青くならないと取れないビー玉のことを先輩は覚えていますか? そう東京の先輩に今すぐ問い正したくて、息を肺いっぱいに吸いこんだ。






 ひどい言葉を吐き出してしまいたい衝動を抑えて、もう一度たくさんの空気を吸い、覚悟もできていないまま口を開こうとした。






 「ねえ、ごめんね。ひとつだけ、きみに嘘をついていたんだ」






 裏道の出口に立ち止まった先輩の声に、言うはずだった叫びを見失う。一秒前まで持ち合わせていたはずの押し寄せるような言葉の波が指の間をすり抜けて、空気に溶けていった。






 急すぎた先輩の言葉に理解が追い付かず、その場に首を傾げる。






 「タピオカ屋さんに行く気なんて最初からなかった。もし、楽しみにしていたならごめんね。かわりに、僕たちの最期の話をするのに相応しいところに行こうか」







 せっかくだから、1年越しに。と息をゆっくりと吐きながら付け加えられた言葉。







 振り返った先輩の目はあの頃のように細められ、ほんの一瞬青色が柔らかい風に吹かれ揺れていた。








 わからないことが増えるばかりの先輩の言葉により首を傾けると、立ち止まったままのわたしに手を差し出してきた。促されるまま、その手を取ると。ざわめきの中を器用に横断して、また裏道へと入っていった。