どうか、先輩だけは幸せにならないで








 「ねえ、なんかさ、喉、乾かない?」






 なんて、少しだけしどろもどろに話題を変えて







 「あ。僕さ、おいしいタピオカ屋さん知ってるからさ、そこに行こうか」





 勝手に話を進めた。





 やめてよ、タピオカなんて。先輩にはラムネしか似合わないですよ。





 普段だったら、かんたんに言えたはずの言葉が喉の奥に臆病に沈んでいく。





 これまで追いかけてきた先輩の面影がないからって、青色の先輩に勝手に期待して、重ね合わせて、馬鹿みたい。






 もう先輩はわたしの知る先輩ではないって、わかっていたはずなのに。






 何も言えないまま背中を向けられ、歩みだした先輩に静かについていく。






 遠慮がちに手は差し出されることはなく、掴む袖も今は遠い。





 影がさした裏道でも、青色の髪の毛は青い。






 暗ければ、青色を黒色に見間違うことも容易そうなのに、見つめれば見つめるほど網膜に焼き付いた青色が先輩の髪の毛に張り付いて離さなかった。