どうか、先輩だけは幸せにならないで









 先輩は言葉もなく頬の淵に沿うように指を上らせてきた。








 くすぐったさに耐えるためにゆっくりと目を閉じれば、聞こえてくるのが自分の鼓動なのか、先輩の心臓の音なのかわからない。混ざって溶けて、ひとつの心臓になって鳴り止まない鼓動。







 今、鼓動を心電図で図ることが出来るのなら、きっと二人分の波が同じ幅で重なり合うのだろう。






 なんて行き過ぎた自惚れは






 「睫毛、ついてたよ」





 そんな先輩の言葉によって打ち砕かれた。





 目下の頬骨の上を撫でて、すぐに離れていった指先。穴があくほど見つめてきた瞳も、たしかに重なり合っていた鼓動も、すべてが離れていく。






 瞼を押し上げると、何事もなかったかのように目の前で青色が笑っていた。