まだ蝉も鳴いていない春。 初夏にもならないどころか、まだ雪が溶けたばかりの季節。 ラムネの香りなんてしないはずなのに、目の前で炭酸が弾けてチカチカするみたいに先輩は眩しい。 一度、やさしく振り払われた手。 すぐに自由になった先輩の左手がわたしの頬をやさしく包み込み、ますます距離が近くなる。 視線が目に直接突き刺さって、穴があいてしまいそう。少しだけ潤んだ先輩の瞳が、遠くの太陽から光を得てほんのりと薄く輝いた。 瞬きも呼吸をすることも許されないような距離。きっと、15㎝もない。