先輩はきらきら、しなくても良かったのに。
縋りたいものほど、すぐに崩れさってしまう。
ここに来るまで片田舎から二時間あまり。
鈍行列車に揺られながら、あえて快速には乗り換えずに、先輩に早く会いたい気持ちとまだ上手く心の準備が出来ていなくて会いたくないような気持ちの揺れ動きを楽しんでいた。
自分しかいない車両を照らす朝日。向かい側の窓にうつる、まだ一度も染めたことがない黒髪に記憶の中の先輩の柔らかな髪の毛に重ねてみたりもしたのに。
馬鹿みたい。
もう先輩の髪の毛は、とっくに黒くも柔らかくもない。
人工的な青髪は高層ビルが乱立する東京の空みたいな色をしていて、ちっとも夏を感じられない。
二人で飲んだサイダーよりも青く、先輩が空にかざしたラムネの瓶よりも青く、本当は二人で忍び込んでみたかったプールの水よりも青く、わたしたちの知っている青すべてを濃縮したような色。



