「恋の終わりには愛か死しかないんだよ。愛も死も、恋みたいに心電図の波が激しく揺れ動かずに、静かにフラットに落ち着くでしょ。そう考えたら、僕たちの最期はどうなるんだろうね」




 と空を仰いで、キンキンに冷えたラムネをあおった先輩の喉仏が大きく上下するのをじっと見つめていた。





 立ち入り禁止、と書かれた紙が貼られた屋上につながる扉に寄りかかった先輩の首筋に浮かんだ汗と、傷みを知らない柔らかな黒髪の間から覗いた熱気を帯びて火照った頬に、勝手に夏を感じていた。校舎の外では運動部の掛け声と蝉の鳴き声がうるさく響いていた日。




 「そんなの、知らないですよ」




 未来のことなんて、わからないものでしょう。の意味を込めて、冷たく返す。




 わたしは愛でも死でも、静かにフラットになんて終わらす気なんてないですよ。




 そんな言葉を飲み込んで、何度もラムネをあおる先輩に見習って軽く口に含んだサイダーを飲み込むと、通りすがりに強く弾けた炭酸がかるく喉を鳴らした。