肩を細かく震わせて、膝がしらに突っ伏したまま苦し気にしゃくりあげる先輩に、スポーツドリンクを差し出そうと伸ばしかけていた手のやり場に困ってしまった。そこには私の知らない先輩がいた。





 かけるべき言葉が思いつかず、ただその場に立ち尽くす。先輩のことをわかった気になって「来年もあるからって、慰めよう」「また次、頑張りましょう」なんて、試合中に吐き出すことを躊躇した無責任な言葉を今になって自分が吐き出しそうになっていることに気が付いて、なんだか恥ずかしくなった。





 次も、来年も、先輩にはもうないんだ。





 情けなく手に握っていたスポーツドリンクがだんだんと温まっていく。




 

 うるさいほど耳につく蝉の鳴き声に混ざって聞こえた先輩の嗚咽。声を噛み殺して苦しそうに息を吸う彼には、触れたら壊れてしまいそうな儚さがあった。





 なにもわかっていなかった。




 なにが、私が慰めようだ。