目が覚めてから数日が経ち、なんとか身体を起こせるようになってから、意外とわたしたちの心中未遂が波紋を呼んでいたことを知った。
小さくもニュースにはならなかったわたしたちの心中事件は、ネットだけをざわつかせていたらしい。
#練馬区大学生心中事件 なんて大層なハッシュタグとともに『死体とか、はじめて見た』投稿された呟きに添えられていた画像はたしかに先輩だった。
真っ白なキャンバスを汚すように高いところからわざわざ筆を振って垂らした絵の具みたいに広がった、ビシャッなんて効果音がつきそうな赤色。いや紅色というには少し黒のコントラストがきつい鮮血の中で、先輩はなぜかわたしの頭を抱えるようにして眠っていた。
まるで、大切なものを守るように抱き抱えていて初めて画像を見た時は信じられなかった。
それに、燃やしたはずの大学はぼやにしかならず、今は普通になにごともなかったかのように授業を再開しているらしい。ぼやの原因は煙草の不始末と先輩に罪が擦り付けられていたのも納得がいかなかった。



