「愛とはなにか、について小学生からやり直して考えた方がいいですよ」






「……でも出会った時にさ、先輩のためならなんでもします。地獄の果てまでだって追いかけますから、覚悟しててくださいねって言ったのはきみだよね」





「脅しですか、それ」





「きみの覚悟は、嘘だったの? それとも、きみも僕のことを見捨てるの?」






 覚悟なんてとっくに出来ているのに。いつもわたしの背中を押さずに、死ねと命令らしく言ってくれなかったのは先輩だ。わたしは先輩のためなら死ねるのに。今日までなんだかんだ、死なせてくれなかったのは先輩だって、わかっていますか? と問うたところで、先輩は黙るだけだって知っているからなにも言えなかった。





 相変わらずわたしたちに打ちつける風は冷たい。





「もしかして。今更、怖気づいているの?」





「そういうことじゃないんですよ」





 じゃあ、なに? なんて都合が悪くなれば、わたしの言葉など無視するくせにちゃんと聞き返してくるところに小さなやさしさを感じずにはいられない。




 だから、吐き出した。






「先輩、本当にわたしだけで死んじゃっていいんですか?」





 ずっと言えなかった、先輩への本音。屁理屈に屁理屈を重ねた先輩とわたしにどれだけの効果があるのかはわからないけれど。