「絶対、水とか牛乳とか飲んじゃ駄目ですからね」





「……偉いね。ぼくのために必死になってくれるんだ」







 はぁ、はぁ、と懸命に走っている息の音や、靴音がはいってしまうのは恥ずかしくても腹を括った。







「当然です。先輩とちがってわたしは、先輩が死んじゃったら生きていけないですから」






「ああ、なんか煙草が急に美味しくなってきたな」






「ちょっと、また食べたんですか? 馬鹿なんですか? 阿呆なんですか? 今すぐ吐き出してください」






 口を動かしている間にも、一歩でも多く走り続け決して足を止めなかった。そのおかげか、ギリギリ視界に入るか入らないかの瀬戸際に大学の校舎の一部が見えてくる。






 そのままスピードを落とさずに裏門から大学の敷地内に入る。警備の方に軽く会釈をして、北校舎のニ階へ向かった。階段を登りきって、廊下を進んだ突き当たり。








 ベランダに出ると、先輩はいた。