どうか、先輩だけは幸せにならないで










 たしか、彼は友人が入っていたサークルの先輩だった。





 遠巻きに教えてもらうまでは、一切接点がなかったからか名前はもちろん顔すら知らなかった。彼はわたしの二つ上の三年生で、特別取らなくてはいけない授業もないようで講義時間になっても教室に顔を出すことはほとんどなかった。隣の席で授業を受ける以前に、同じ教室で受けられるだけで奇跡みたいな遭遇率。






 その中で一度だけ、期末レポートの提出だったかの時。たまたま近くに座っていた印刷したレポート以外なにも持っていない彼に「レポート提出届とペン、貸して」と声をかけられたのがファーストコンタクト。





 一方的に知っていたわたしからすれば、フォースコンタクトみたいなものだったけれど、互いに認知したと胸を張って言える出来事はこの時が初めてだったと思う。