また、今年もわたしの部屋にも巡ってきていた夏が終わろうとしていた。






 一度先輩との出逢いから別れまでを書き出してみようと思い立ってから、3時間。







 節々が固くなった身体を伸ばしながら、ベランダに出ていつの日か紙飛行機を飛ばした空を見上げれば、






 灰色の雲が通り過ぎたからか夕方だというのに真っ青な色に吸い込まれそうになった。もうその空には入道雲は浮かんでいないけれど。






 秋めいた涼しい風が大人になったわたしの髪を揺らしていく。






 もう煙草の匂いも柚子の香りもしないベランダを背にゆっくりと息を吐き出す。







 すっかりひとりで過ごすのに慣れてしまった、東京の端にあるとあるアパートのワンルーム。






 家賃は相変わらず、4万円。






 未だに扇風機が首を回している。キコキコ、と今にも壊れそうな音がして、そんなに使い込んだかなと首を傾げた。けれど、すぐに先輩がこの家に転がり込んできた頃からあるものだもんね、なんて合点がいった。







 そうだ。最近ふしぎとお金が貯まるようになってきたから、ちょっと奮発してエアコンでも買っちゃおうかな。そしたらうだるような夏の暑さだけじゃなくて、人肌が恋しくなる冬の寒さも乗り越えられそう。