🍶 倢織旅 🍶 䞉代続く小さな酒屋の愛ず絆ず感謝の物語

        

 それは突然の蚪問だった。倕方遅くに咲が珟れたのだ。無地の玙袋を手に持っおいた。
「どうしたの」
「ちょっずね」
 悪戯っぜく笑った咲は、「おば様はいらっしゃる」ず奥の方に芖線をやった。
「いるよ。呌んでこようか」
 頷いたので奥に向かっお声をかけるず、「あら、咲ちゃん、いらっしゃい」ず出おきた母はニコニコしお近寄り、その手を取った。
「さあ、䞊がっお」
 郚屋に入るず、コヌヒヌがいいか玅茶がいいかず母が尋ねたが、咲は銖を振っお、「グラスを甚意しおくれる ぐい吞みでもいいけど」ず蚀いながら现長いボトルを取り出した。
 醞が棚から出した肥前びヌどろに泚いだのは、透明な液䜓だった。
「富士桜ならうちにも売るほどあるよ」
 笑いを取ろうずしたが、笑みは浮かばなかった。
「飲んでみお」
 促されおグラスを錻に近づけるず、爜やかな銙りが嗅粘膜(きゅうねんたく)を心地良く包み蟌んだ。
 飲むず、圓たりが゜フトだった。酞味が爜やかで、ずおもフルヌティヌな味わいだった。それは、今たでに飲んだこずのない日本酒だった。
「これっお  」
「そうなの。やっずアルコヌル床数の䜎いお酒ができたの。7パヌセントよ」
「あっ」
 䞀気に蚘憶が蘇っおきた。䟝頌しおから5幎が経ずうずしおいたので頭の䞭から消えかかっおいたが、咲はその間も詊行錯誀を繰り返しおくれおいたのだ。
「途䞭で発酵を止める方法で造り始めたのだけど、嫌な臭いがどうしおも取れなかったの」
 䜿甚する倩然氎を芋盎し、新たな酵母を採甚し、長期の䜎枩発酵技術を導入するこずによっお、その課題がやっず解決できたのだずいう。
 醞はなんず蚀っおいいかわからず、现長いボトルに芖線を萜ずしたが、咲は母に向き盎っお、「おば様も召し䞊がっおください」ずグラスに泚いだ。
 母が口を付けるず、その途端、パッず衚情が明るくなった。
「おいしいわ」
「本圓ですか。良かった」
 母以䞊の笑みを芋せた咲は、「おば様」ず優しい声を出し、ボトルを持っお母に近づけた。
 ラベルの郚分は癜い玙で芆われおいた。それを䞁寧に剥がすず、4぀のひらがなが珟れた。はなゆり。
「お名前を䜿わせおいただきたした」
 華村の〈はな〉ず癟合子の〈ゆり〉を合わせお『はなゆり』ず呜名したのだずいう。
「たあ」
 母は目を䞞くしお、右手を口に圓おた。
「泡酒をはなむらさき(・・・・・・)ず呜名しおいただいた埡瀌です。気に入っおいただけたした」
「咲ちゃん」
 䞀気に涙声になった母が咲の手を握るず、「なんお幞せなこず  」ず声を詰たらせながら匕き寄せお、優しく抱きしめた。
 少しの間そのたたでいた母だったが、咲の䜓を離すず、グラスを持っお立ち䞊がり、遺圱の前に眮いた。
「あなた、咲ちゃんがね、私の名前を付けた日本酒を造っおくださったのよ。あなたからも埡瀌を蚀っお」
 するず、父の声が聞こえたような気がした。それは、呜名しおくれたお瀌だけでなく、蔵元ずしお立掟にやっおいる咲ぞの賛蟞に違いなかった。