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 その翌日、妻の実家に行った。
 店を継ぐことを伝えると、「まさか……、そんなこと……、考えたこともなかった……」と一徹の瞳がゆらゆらと揺れて定まらない様子になった。
「わしの代で終わらせるつもりだったから……」
 まだ信じられないというふうに何度も首を振り、確かめるように百合子に視線を向けると、百合子は笑みを浮かべて頷いた。
 それを見てやっと現実のこととして受け入れたのか、崇の手を取って何度も頭を下げた。その横で百合子の母親が正座したまま両手で顔を覆っていた。
「崇さんが店を継いでくれるなんて……」
 そのあとは嗚咽で言葉にならなかった。百合子はその肩を優しく抱いて、「良かったね、お母さん」と右手で母親の肩を擦りながら左手で口を押えた。親孝行ができた喜びに肩を震わせているようだった。