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シャンパーニュを出発した咲はパリに寄って父親に帰国することを告げた。すると、思わぬ言葉が返ってきた。
「本社に戻ることになった」
それは、取締役に就任するという嬉しい知らせだった。それは、日本とパリでの二重生活に終わりを告げることを意味していた。
「寂しい思いをさせたから、そろそろ償いをしないとね」
乳がんの再発もなく一人で留守を預かっていた母親だったが、夫と子供二人がフランスに渡って寂しい思いをしていることは容易に察することができた。
「私だけでなくお父さんも帰ったらびっくりするでしょうね」
母親の喜ぶ顔を想像して嬉しくなったが、この店をどうするのか気になったので訊くと、ずっとサポートをしてくれた社員に任すことにしたという返事が返ってきた。それだけでなく、年に何回かはこちらに来るので、その時には音にも会えると顔をほころばせた。
「ところで佐賀にはいつ行くんだい?」
「東京で1週間くらい過ごしてから行くつもり」
「そうか……」
少し寂しそうな顔になった。自分の帰国とすれ違うように佐賀に行ってしまうことへの残念な気持ちが現れているようだった。
「でも、日本にいるんだからいつでも会えるわよ」
わざと明るい声を出すと、「まあ、そうだけどね」と少し肩を上げて笑った。
シャンパーニュを出発した咲はパリに寄って父親に帰国することを告げた。すると、思わぬ言葉が返ってきた。
「本社に戻ることになった」
それは、取締役に就任するという嬉しい知らせだった。それは、日本とパリでの二重生活に終わりを告げることを意味していた。
「寂しい思いをさせたから、そろそろ償いをしないとね」
乳がんの再発もなく一人で留守を預かっていた母親だったが、夫と子供二人がフランスに渡って寂しい思いをしていることは容易に察することができた。
「私だけでなくお父さんも帰ったらびっくりするでしょうね」
母親の喜ぶ顔を想像して嬉しくなったが、この店をどうするのか気になったので訊くと、ずっとサポートをしてくれた社員に任すことにしたという返事が返ってきた。それだけでなく、年に何回かはこちらに来るので、その時には音にも会えると顔をほころばせた。
「ところで佐賀にはいつ行くんだい?」
「東京で1週間くらい過ごしてから行くつもり」
「そうか……」
少し寂しそうな顔になった。自分の帰国とすれ違うように佐賀に行ってしまうことへの残念な気持ちが現れているようだった。
「でも、日本にいるんだからいつでも会えるわよ」
わざと明るい声を出すと、「まあ、そうだけどね」と少し肩を上げて笑った。



