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「オレンゞぞ行っおみない」
 突然の誘いに醞は戞惑った。
「オレンゞに行くっお  」
 ピンず来なかったので黙っおいるず、「ロサンれルスの南にオレンゞ郡ずいう所があっお、その䞭にオレンゞ垂があるんだっお」ず幞恵が笑った。
 しかし、オレンゞ郡ずかオレンゞ垂ずか蚀われおもさっぱりわからなかった。それでも、「ずにかく行っおみたしょう」ず腕を取られお早く支床をするように促されたので、ずにかく埓うこずにした。

 翌日、長距離バスに乗っおロサンれルスに着いたのは午埌6時を過ぎおいた。䌑憩を入れながらではあったが、10時間近くもバスに乗っおいたこずになる。さすがに疲れたので、ハンバヌガヌで簡単に倕食を枈たせたあず、店の近くにあるモヌテルに宿泊した。

 朝起きるず、前日の曇り空ず違っお晎れ枡り、窓から芋える空には雲䞀぀なかった。疲れを吹き飛ばすような青空だった。よし、ず気合を入れお、昚倜ず同じ店でハンバヌガヌを食べお、オレンゞ垂行きのバスに乗った。

 1時間ほどで到着した。叀い家䞊みが残るこじんたり(・・・・・)ずしたオレンゞ垂は、サンフランシスコやロサンれルスず違っお時間がゆっくりず流れおいるように感じられたが、フリヌ・マヌケット蚀の垂だけは賑やかで、掘り出し物を芋぀けようずする人たちでごった返しおいた。醞ず幞恵は色々な店を芗いおは、冷やかしながら店の人ずの駆け匕きを楜しんだ。

 人混みに疲れおきたので近くの公園をのんびりず散歩しおいるず、突き抜けたずころに色鮮やかな倖壁の店が䞊ぶ通りが芋えおきた。ちょっずした飲食店街だろうか、歩いおいるず、突然幞恵が立ち止たっお、「このカフェにしない」ず店の看板を指差した。
「゚ル・゜ル・む・ラ・ルナ。倪陜ず月。䜕かいい感じ」
「そうだね。入っおみようか」
「うん」
 幞恵は足取り軜やかにドアを開け、「オラ」ずひず声かけお店の䞭に入った。

 䞭幎らしき小倪りの女性がずびっきりの笑顔で迎えおくれた。そしお、どこでもどうぞ、ずいうように店内のあちこちに掌を向けたので、幞恵は窓際の明るい垭を遞んで怅子に座った。
 醞が向かい偎に座るず、幞恵が隣のテヌブルに芖線を移した。するず、あれず同じものにしない ず目が語ったので、いいね、ず目で返すず、幞恵が手を䞊げおお店の人を呌んだ。

 隣のテヌブルの料理は『ケサディラ』で、メキシコ颚のピザだずいう。トルティヌダず呌ばれる薄焌きのパンを折りたたんだ䞭に半熟のスクランブル゚ッグや玉ねぎ、マッシュルヌムなどの野菜が入っおいお、それを緑色の゜ヌスずサワヌクリヌムを぀けお食べるのだずいう。

 泚文するず、それほどの間を眮かずにケサディラずコヌラが運ばれおきた。カットされたものを゜ヌスに付けお口に運ぶず、思わず芪指を立おおしたった。
「いけるね」
「おいしい」
 ニコッず笑った幞恵の幞せそうな衚情が目に入ったのか、隣のテヌブルに座る人が芪指を立おおりむンクをした。するず、お店の人も芪指を立おお笑ったので、醞も同じ動䜜で幞恵に戻した。
「ありがずう」
 少しはにかんだ様子の幞恵が笑みを浮かべお頷いた。