3
「華村さん、助けてください」
高齢の男性が崇に頭を下げた。佐賀夢酒造の蔵元だった。
「助けてと言われても……」
崇にそんな力はなかった。
「そこをなんとか」
畳におでこを擦りつけるようにして救いを求められたが、唸ることしかできなかった。自分の店の経営だけで精一杯なのだ。他社を助ける余裕なんてあるはずがなかった。
それでも長い付き合いのある佐賀夢酒造に冷たい言葉を吐くわけにはいかなかった。失礼にならないように言葉を選びながら、期待に添うことはできない旨を、申し訳ないという表情で丁寧に伝えた。
すがる思いで訪ねてきたであろう蔵元はなんの成果も得ず、意気消沈して帰っていった。その後姿を見送っていると、心が張り裂けそうになった。あれほどの隆盛を極めていた佐賀夢酒造がこれほどの危機に遭遇するとは思いもしなかった。
それだけでなく、なんの力にもなれない不甲斐なさに落ち込むばかりだった。
資金力があればなんとかできるのに……、
強く唇を噛んだ。しかし、このままにしておくことはできないと思い直し、翌日、すがる思いで學の自宅を訪ねた。
「學さん、君の会社でなんとかしてもらえないかな」
佐賀夢酒造の窮状を訴えて、支援を打診した。しかし學は、「う~ん、困りましたね」と腕組みをして天井を見上げるばかりだった。それでも、「このままでは潰れるのも時間の問題かもしれないんだ」と必死になって訴えたが、視線が崇に戻ることはなかった。
「華村さん、助けてください」
高齢の男性が崇に頭を下げた。佐賀夢酒造の蔵元だった。
「助けてと言われても……」
崇にそんな力はなかった。
「そこをなんとか」
畳におでこを擦りつけるようにして救いを求められたが、唸ることしかできなかった。自分の店の経営だけで精一杯なのだ。他社を助ける余裕なんてあるはずがなかった。
それでも長い付き合いのある佐賀夢酒造に冷たい言葉を吐くわけにはいかなかった。失礼にならないように言葉を選びながら、期待に添うことはできない旨を、申し訳ないという表情で丁寧に伝えた。
すがる思いで訪ねてきたであろう蔵元はなんの成果も得ず、意気消沈して帰っていった。その後姿を見送っていると、心が張り裂けそうになった。あれほどの隆盛を極めていた佐賀夢酒造がこれほどの危機に遭遇するとは思いもしなかった。
それだけでなく、なんの力にもなれない不甲斐なさに落ち込むばかりだった。
資金力があればなんとかできるのに……、
強く唇を噛んだ。しかし、このままにしておくことはできないと思い直し、翌日、すがる思いで學の自宅を訪ねた。
「學さん、君の会社でなんとかしてもらえないかな」
佐賀夢酒造の窮状を訴えて、支援を打診した。しかし學は、「う~ん、困りましたね」と腕組みをして天井を見上げるばかりだった。それでも、「このままでは潰れるのも時間の問題かもしれないんだ」と必死になって訴えたが、視線が崇に戻ることはなかった。



