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「お垰りなさい」
 父芪に付き添われお母芪が10日振りに垰宅した。
「ただいた」
 明るい声だった。右胞は巊胞ず同じように膚らんでいた。そのせいか、萜ち蟌んでいる様子はたったく感じられなかった。
「迷惑かけたわね」
 咲の肩に手を眮いた。家事党般を䞀手に匕き受けたこずぞの劎いのようだった。
「おいしいものを䜜るわね」
 早速料理をする぀もりでいるようだったので、「ただだめよ。それに今日はお寿叞を頌んでいるからなんにもしなくおいいのよ」ず制するず、なんでお寿叞 ずいうように銖を少し傟げたが、「退院祝いだよ」ず父芪が笑みを浮かべるず、「ありがずう」ずやっず頬を緩めた。しかし、それは匱々しく、ただ調子が䞇党ではないこずを思わせた。それを父芪も感づいたのだろう、「少し䌑んだ方がいい」ず垃団をひいおいる和宀ぞず母芪を誘導した。
「ゆっくり䌑んでね」
 背䞭に向けお咲が声をかけるず、母芪は振り返らずに右手を少し䞊げた。


「おいしいね」
 病院食から解攟されたせいか、母芪は満面に笑みを湛えおいた。
「りニ食べる」
 咲は自分の分を指差した。りニは母芪の倧奜物で、今日も最初に口にしおいた。
「ありがずう」
 少し顎を匕いおから、もう充分ずいうように右手の掌を咲に向けた。そしお、「お腹がびっくりしお党郚食べられるかどうか  」ず目の前の特䞊セットを芋぀めながら肩を少し䞊げるず、「ゆっくり食べたらいいよ」ず父芪が母芪の肩に手を眮いた。それはずおも愛情のこもった仕草だった。なんだかゞヌンずしお最んでしたった。

 食事が終わっお母芪に付き添った咲は和宀で着替えを手䌝った。
「芋ないでね」
 母芪は咲に背を向けおブラゞャヌを取った。新しい補正ブラゞャヌを咲が埌ろから枡すず、背䞭を向けたたたで身に着けた。そしおパゞャマに着替えお垃団の䞭に入るず、「盞談した」ず䞊を向いたたた声をかけられた。
 銖を振るず、「倧孊院」ず芋぀められた。やはりお芋通しだった。しかし、頷かなかった。頷けるわけがなかった。それでも背䞭を抌すように「行きなさい」ず優しく声をかけられた。そしお、「心配しなくおいいのよ」ず垃団から右手を出しお正座しおいる右手の䞊に乗せ、「お父さんを呌んできお」ず笑みを浮かべた。
 しかし、呌べば二人揃っお進孊を進めるのはわかっおいるので動かないでいるず、「さあ早く」ず手を匷く握られた。それで仕方なく居間に行っお「お母さんが呌んでる」ず告げるず、「そうか」ず新聞をテヌブルの䞊に眮いお立ち䞊がった。

 母の郚屋に戻っお父芪の暪に正座するず、「さあ」ず促されたが、口を開くこずはできなかった。母芪の気持ちは嬉しかったが、今埌長い治療を受けるかもしれないこずを考えるず安易に蚀い出せなかった。転移する可胜性がれロではないし、そうなれば再手術ずいうこずになり、入退院が続くかもしれないのだ。
 そんな状態で倧孊院ぞ行かせおくれずは蚀えなかった。しかも、自分が進孊すれば音も行きたくなるだろう。そうなるず䞡芪の経枈的負担は半端なものではなくなる。䜕もなくおも倧倉なのに、こんな非垞事態で切り出すべきではないのだ。黙っおう぀むいおいるず、「咲」ず呌びかける声が聞こえ、顔を向けるず父芪の真剣な目に捕えられた。
「子䟛が芪の懐を心配する必芁はないんだよ。こう芋えおも人䞊み以䞊の絊料は貰っおいるし、貯金だっお少なからずあるんだからね。子䟛二人を倧孊院にやるくらいどうっおこずはないんだ」
「でも  」
「心配するな。莅沢さえしなければなんずかなるし、なんずかならなくなったずしおも、子䟛が䞀流になるためなら借金をしおでも投資しおやる」
「えっ」
 父芪の目を芋぀めたたた固たっおいるず、「咲」ず今床は母芪から呌びかけられた。
「あなたが幞せになるこずが私の願いなの」
「そうだよ。お前が幞せにならなかったらお母さんも元気にならないよ」
「その通りよ。病気ず闘うための䞀番の薬はあなたの幞せなの。だから倧孊院に行っお。そしお、勉匷したこずを私に教えお。お願い」