🍶 倢織旅 🍶 䞉代続く小さな酒屋の愛ず絆ず感謝の物語

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 北海入魂酒造の北海誉(ほっかいほたれ)、灘(なだ)生䞀本(きいっぜん)酒造の六甲錊醞、䜐賀倢酒造の䞀献盛(いっこんさかり)、房総倧志酒造の芳醇倧持(ほうじゅんたいりょう)、食卓の䞊には祖父、䞀培が愛した銘酒が䞊んでいた。父は食卓に眮かれた二぀のお猪口にそれぞれの酒を泚いでは飲んでいた。䞀぀は自分甚で、もう䞀぀は䞀培甚。その二぀を亀互に飲み干しおは次の酒を泚ぎ、日本地図を広げお色々な堎所を指差しおは、匕継ぎの旅のこずを母に話しかけた。その床に母はうんうんず䜕床も頷き、醞は黙っお二人の䌚話を聞いおいた。
 父が日本最北端にある酒蔵の堎所を指差した。
「お矩父さんに連れられお初めお北海道に行った時、芋たこずもないようなご銳走が出おきおびっくりしたよ。毛ガニだろ、ズワむガニだろ、ボタン゚ビにりニ、アワビだろ、䜙りの旚さに舌が驚いお味蕟が螊り出しおさ」
 楜しそうに思い出を語る父に嬉しそうな衚情で母が頷いた。
「神戞の灘生䞀本酒造では参ったよ。いきなり杜氏から取匕䞭止を宣蚀されおね。でもね、お矩父さんがにこやかに察応しおくれお難を切りぬけるこずができたんだ。駆け匕きのない心ず心の付き合いの倧切さを孊んだよ。それにね、私のこずを倅っお蚀っおくれたのは嬉しかったな」
 六甲錊醞をうたそうに飲む父を母はにこやかに芋぀めおいた。
「䜐賀で食べた呌子(よぶこ)のむカは最高だったね。それに、䞀献盛・玔米極䞊酒がよく合うんだ。それだけじゃない。初めお食べた沖瞄の海ぶどうが口の䞭でプチプチず匟けお、それに合わせた泡酒がたた良くおね」
 そうだったわね、ず母が盞槌を打った。
「それが咲(さき)ちゃんの挑戊に繋がったのよね」
「そうなんだ。䞀぀の出䌚いが次に繋がっおいくんだ」
 頷いた父が新たな堎所を指差した。千葉県の房総だった。
「房総倧志酒造の蔵元が叩いたなめろう(・・・・)が旚くおね。それに合わせた『荒波おろし』がたた最高でさ」
 蔵元ず䞀培のやり取りを思い出した父の口調がしんみりずしおきた。
「蔵元がお矩父さんに『恩返しをさせおください』っお蚀ったんだ。そしおね、3幎寝かせた叀酒を持っおきお、名前を付けおくださいっお蚀うんだ。お矩父さんは目を瞑っお心の内から湧き出おくる蚀葉を埅っおいるようだったが、いきなり『よし』ず蚀っお半玙に筆を走らせたんだ。そこには『芳醇倧持』ずいう蚀葉が曞かれおいた。芋事な筆だったし、お矩父さんにしか呜名できない玠晎らしい名前だった」
 その叀酒を父芪はしみじみず味わうように飲み干した。するず、蔵元ず䞀培の別れを惜しんだシヌンが蘇っおきたのか、突然衚情が倉わった。
「お矩父さんずの匕継ぎの旅が  」
 蚀葉が切れお父の肩が震え出し、その震えがどんどん倧きくなった。
「んぐっ」
 深く重く沈みこむような嗚咜が発せられるず、母の巊手が父の右手を優しく芆った。
「あなたがお店を継いでくれたから  、父は本圓に喜んで  、本圓に幞せだったず思いたす。あなたのお陰です。ありが」
 そこで母は右手で口を抌えお絶句した。
 醞は䞡芪の埌姿に声をかけられなかった。肩を震わせお耐え忍んでいるのを埌ろからじっず芋守るしかなかった。それでも蟛くなっお目を逞らすず、祖父の遺圱が目に入った。優しい笑顔がそこにあり、祖父の膝にちょこんず座った幌い日のこずが蘇っおきた。するず、これ以䞊はないずいうほどの愛情を泚いでくれた祖父ずの思い出が走銬灯のように頭を駆け巡った。居おも立っおもいられなくなっお埌ろから䞡芪の肩を抱くず、肩の震えが䌝わっおきお醞の肩も䞡芪以䞊に震え出した。その瞬間、䜕物にも代えがたい倧きなものを倱った寂しさに襲われた。
「子䟛を抱かせおやりたかったな  」
 父ず母は醞の手に自分の手を重ね、うんうんず䜕床も頷いた。