🍶 夢織旅 🍶 ~三代続く小さな酒屋の愛と絆と感謝の物語~

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 どうかな……、
 崇は彼の顔を覗き込んだ。
 どうかな……、
 彼の顔に変化はなかった。
「どうかな?」
 待ち切れなくなって、口から声が出た。すると、「いけますね」と笑って、「日本酒が苦手な人でもこれなら飲めると思います」と太鼓判を押してくれた。
 答えたのは學だった。日本酒が苦手と言っていた彼がこの泡酒は飲めると言う。更に、彼はお代わりを要求した。
 驚いた。日本酒が苦手な彼がお代わりをするなんて信じられなかった。しかし、空耳ではなかった。正真正銘の彼の声だった。それは、この泡酒が第一関門を突破したことを告げる声だと思った。
 いける! 絶対にいける! 
 崇は確信した。善は急げと白鳥開夢に手紙を書いた。
『この泡酒は日本酒の可能性を広げる力を秘めています。日本酒が苦手だった親戚が「おいしい」と言ってお代わりを要求したのです。絶対にいけると思います』
 そして同時に、一徹の許可を得て大量の注文を出した。売れるという確信からだった。新たな目玉商品ができたことにワクワク感を止めることができず、夢はどんどん広がっていった。

 しかし、待てど暮らせど泡酒は届かなかった。
 催促しても梨のつぶてだった。
 どうなっているんだ? 
 居ても立ってもいられなくなり、佐賀夢酒造を訪ねた。